最初に
プログラミング教育 という言葉が出て数年。
今では,様々な形態のプログラミング教室があちこちにあり,子どもの習い事といえば猫も杓子もプログラミングといった状態になっていますが,それだけ,プログラミングを学びたいという子どもたちや「プログラミングを学ばせたい」という保護者の方が多いということの表れかと思います。
さて,今から記すのは,「どのプログラミング教室が良いか?」という話ではありません。
正直,プログラミング教室にそんな大差はありません。学習塾と同じで,システムや教え方のツール・アプローチ方法は異なれど,やってることは同じです。
結局のところ,通うかどうかの判断は,開講の曜日や時間,教室の場所,雰囲気,設備・環境,講師との相性などで決定されていると思いますが,やはり,「通う」となると,プログラミングの技術や考え方を身につけることができるかどうか?という点は気になる所です。
そこで,今回はプログラミング教室に通う前に知っておきたい現実の話を記します。
プログラミング教室の広告やHP,プロモーションビデオを見ると,いかにも楽しく,そして簡単にマスターできそうなイメージですが・・・実際のところ,どうなのでしょうか?
ぜひ,ご一読ください。
プログラミング学習の現実
※以下の内容は,幼児・小学生に限定した内容になります。
■プログラミングは向き・不向きがあります
「プログラミングは誰でもできるようになる!」と思ってしまいがちですが,残念ながらそうではありません。人間には向き・不向きがあるように,プログラミングにも向き・不向きがあります。
なお,ここでいう向き・不向きとは,算数や国語の得意・苦手とほぼ同じ意味になります。
プログラミングは,それを学び始めたすべての子どもたちが,広告に出てくるような何かの賞を受賞するようなスーパー小学生になれるものではないとあらかじめご承知おきください。
■プログラミングは 「知識の積み上げ」 が必要です
プログラミングは,算数や英語と同様,知識の積み上げが必要です。新たなスキルを身につけるためには,前段階の知識(前のレッスンで学習した内容)が理解できていないといけません。
つまり,教室に通っていても,次のレッスンの時に前回の内容を忘れてしまっていると,同じところからのやり直しになります。
相応の努力をせず,楽してプログラミングを身につけることはできませんのでご注意ください。
■実力以上に進んでしまい,実際は何も身についていないパターンがあります
先ほど記したように,プログラミングは知識の積み上げが必要です。ところが,次のようなスパイラルにあります。
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わからない箇所がある。
↓
講師に教えてもらい(代わりにやってもらい),その場ではわかったふりをして,次に進む。
↓
次のステップに進むことができてうれしい。その日のレッスン終了。
↓
レッスン終了後,子どもが「楽しい」というので,保護者は安心する。
↓
復習や演習(自分でプログラムをつくってみる)を全くせず,次回の授業に行く。
↓
新しく学ぶ項目が出てくる。
↓
前提となる知識が定着していないので,先に進めることができない。
↓
それを見かねた講師の方に教えてもらい(代わりにやってもらい),その場ではわかったふりをして次に進む。
↓
次のステップに進むことができてうれしい。その日のレッスン終了。
↓
レッスン終了後,子どもが「楽しい」というので,保護者は安心する。
↓
復習や演習(自分でプログラムをつくってみる)を全くせず,次回の授業に行く。
↓
新しく学ぶ項目が出てくる。
↓
前提となる知識がまったく定着していないので,わからない。
↓
見かねた講師登場。代わりにやってもらい,その場ではわかったふりをして次に進む。
↓
(これの繰り返し)
先に進んではいるものの,まったくプログラミングが理解できていない。
↓
あるとき,「子どもが楽しいと言っているから大丈夫」と信じてきた保護者の方が,何も身についていないことにビックリして教室に連絡する。
※以降,想像にお任せします。
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長くなってしまいましたが,ざっくばらんに述べてしまうと
保護者の方の心情は,
「レッスン代を払っているのだから,先に進んで当然,留まっていたらおかしい」
講師の方の心情は
「先に進めておけば保護者に何も言われない,留まるとクレームの元」
子どもの心情は
「先に進みさえすれば,理解していなくても楽しい,留まるのはイヤ」
といったところでしょうか。
三者三様,それぞれの心情は理解できますが,大切なことは,プログラミング教室に通い始めた目的であり,それは 「プログラミングを学ぶため」 だったはずです。
前述しましたが,プログラミングは楽して身につけることができるものではありません。学ぶ過程においては,時に我慢が必要になる場面がありますので,ご承知おきください。
■プログラミングを始める学年について
「小学生にプログラミングからやっても意味はない」という意見はあるものの,する・しないという観点で見れば,やった方が良いのは明白です。
しかし,学び始める時期やタイミングが大切になりますので,参考までにご覧ください。
なお,子どもの成長は一律ではないので,当てはまらない場合もあります。予めご了承ください。
(1)幼児 |年少・年中・年長|
『学ぶ』という観点からでは無理です。小学生まで待ちましょう。
ただし,遊び・親しむことはできますが,それに対して安くないレッスン代を払い続けるのはどうかと思います。。。
この時期であれば,単発のイベントに参加したり,ご家庭内で一緒に行うのがベストですが,保護者の方のフルサポートが必要になりますので,かなりの労力がかかります。
(2)小学校 低学年 |小1|
プログラミングを始めることはできますが,子どもの発達段階にばらつきがあるため,学びを進めることができる場合とできない場合があります。
最大の関門は 「if」 です。基本的に,if は while とセットで使うのですが,なぜ,一緒に使うのかなどの抽象的な概念を理解するためには,脳の発達を待たなければいけません。
始めることはできますが,推移をよく見て,時には立ち止まるという勇気と我慢が必要な学年です。
(2)小学校 低学年 |小2|
まだまだ子どもの発達段階にばらつきがある学年のため,学びを進めることができる場合とできない場合があります。
とはいえ,小1よりも,いい状態で始めることができるのは間違いありませんし,のめりこむことができる場合,グングンマスターしていきます。
(3)小学校 中・高学年 |小3~小6|
小3以降になると,子どもの発達段階がそろうため,プログラミングを始めるのに最適な学年です。
学びを開始することをお勧めします。
ただし,私立中受験を目指すお子様の場合は,小4の2月,どんなに遅くとも小5の2月からは受験勉強に専念していかなければならないので,プログラミング教室は終了になります。
したがって,中学受験をお考えの方は終了しなければいけない時期から逆算して,プログラミングを学び始めてください。
■プログラミング教室に通っているからといって,タイピングやコード入力ができるとは限らない
幼児・小学生を対象にしたプログラミング教室の大多数は,ビジュアル言語のプログラミングです(アイコンをクリックしたり,並べ替えたりするもの)。
したがって,プログラミング教室に通っているからと言って,タイピングができるようになっているわけではありません。
また,世間一般でいうプログラミングとはコード入力のイメージ(英数字を入力していく)が強いですが,ビジュアル言語で学習している関係上,教室に通っているからコード入力ができることはありません(ビジュアル言語からコード入力への以降は,かなり高いハードルです)。
幼児・小学生を対象にするプログラミング教室は「プログラミングの考え方を学ぶ」ことがメインになりますので,ご注意ください。
※後に,コード入力のプログラミングにチャレンジする際,学んだことはかなり役立ちます。
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今の時点(2021.6月)でパッと思いつく限り,「プログラミング教室に通う前に知っておきたい事」を挙げてみました。
繰り返しになりますが,プログラミングは,算数・国語のような教科学習同様,楽して誰でもできるようなものではありません。
ぜひ,広告やHP,プロモーションビデオなどのイメージに踊らされて,最初の入りを間違えないようにしていただければ幸いです。